早朝・深夜の快速(特急車両使用)
かえでんでは原則として普通・快速列車と特急列車の運用は分けられており、別料金を徴収する特急列車はリクライニングシートを備えた専用の車両が用いられています。大幅なダイヤ乱れ時以外は特急用車両が普通・快速列車に用いられることは基本的にはありませんが、毎日上下1本のみ特急用車両を使用した快速列車が聖籠駅~村上市駅間で運行されています。
下りは早朝の運行で、聖籠車庫を出庫後6:45に聖籠駅を出発し、途中B特急停車駅と金屋・塩谷口に停車し、終点の村上市駅には7:26に到着します。村上線末端部ではそもそもの運行本数が多くないこともあり、特急料金が不要であることも相まって主に村上市内へ通学する学生の重要な足となっています。岩船駅や瀬波温泉駅を出発するころには、制服を身にまとった学生で通路までいっぱいになるほどの混雑になることもしばしばです。この列車は村上市駅に着くと約30分間の停車の後、特急ゆうなぎB4号新潟古町駅行きとして折り返していきます。
(資料: 下り全列車時刻表)
上りは村上市駅に22:16に着く特急ゆうなぎB15号の折り返しとして、村上市駅を22:27に出発します。こちらは途中B特急と同じ駅に停車し、終点の聖籠駅には23:06に到着します。最終列車が優等列車となるかえでん唯一の列車となっています。深夜帯の上り列車ということで、コストダウンも兼ねてあえて利用の少ない小駅を通過する快速列車としているのだと考えられます。この列車は聖籠駅に到着後そのまま聖籠車庫に入り、1日の仕業を終えることになっています。
(資料:上り全列車時刻表)
通学需要について
かえでんの利用者の中で大きな割合を占めているのが、通学に利用する学生と考えられます。しかしかえでんの沿線には、駅から徒歩圏内に位置するような高校や大学が限られており、正直なところ通学のメイン手段として利用されているとは言い難いと思われます。
学校の立地論について詳しく調べたことはありませんが、おそらく新設や移転の際に公共交通機関の利便をある程度踏まえて場所が決められていると思うので、ここはかえでんの都合の良いように高校を勝手に増設させてもらいました。
【紫雲寺高校】
- 村上線 紫雲寺駅徒歩5分
- 設置学科:普通科 音楽科 英語コミュニケーション科
- 定員:各学年180人 3学年約540人
【亀田総合高校】
- 阿賀野線 東亀田駅徒歩5分
- 設置学科:総合学科
- 定員:各学年200人 3学年約600人
その他、かえでんの沿線には史実通り下記の通りの高校・大学があり、通学生に多く利用されています。かえでんの駅と学校を結ぶ通学バスがある(と勝手に設定している)場合も合わせて記載しておきます。
作者K補足:
実在の学校名が挙げられていますが、検索エンジンでリストアップされる等当該校の迷惑とならないよう、noindexを設定しています。
高校
新潟中央高校 | 村上線 新潟古町駅徒歩18分 |
新潟南高校 | 村上線 新潟万代駅徒歩20分 |
万代高校・明鏡高校 | 村上線 沼垂駅徒歩9分 |
新潟北高校 | 村上線・空港線 県立大学駅徒歩19分 |
村上高校 | 村上線 村上駅徒歩5分 |
村上桜ヶ丘高校 | 村上線 村上駅徒歩7分 |
村上中等教育学校 | 村上線 村上駅徒歩17分 |
新潟明訓高校 | 阿賀野線 丸山駅徒歩14分 |
阿賀野高校 | 阿賀野線 水原中央駅徒歩5分 |
大学
新潟大学医学部キャンパス | 村上線 新潟古町駅徒歩9分 |
新潟県立大学 | 村上線・空港線 県立大学駅徒歩5分 |
新潟食糧農業大学胎内キャンパス | 村上線 宮瀬駅徒歩12分 |
新潟医療福祉大学 | 村上線 木崎駅から通学バス10分 |
敬和学園大学 | 村上線 聖籠駅から通学バス10分 |
新潟リハビリテーション大学 | 村上線 岩船駅から通学バス5分(岩船口駅徒歩9分) |
岩船駅・瀬波温泉駅 駅員の終業業務
特急料金を必要とする「特急ゆうなぎ」「特急エアポートライナー」については、終着駅での折り返しの際車内清掃を行います。合理化のため駅務スタッフを積極的に削減しているため、清掃専門のスタッフは新潟古町駅を除いて基本的におらず、基本的には乗務員が座席の回転と合わせてごみの回収や汚れの清掃を手際よく行っています。
ただし、一部時間帯で折り返し時間が十分に取れない場合があり、その場合は乗務員以外のスタッフが清掃に携わることになりますが、特に異色ともいえるのがこの図の例です。
特急ゆうなぎB11号は、村上市に19:39に到着した後回送として折り返し、新潟空港20:50の特急エアポートライナー12号となります。村上市での折り返し時間はたった4分のため、乗務員は折り返しにかかる業務に追われ十分に車内清掃をする時間が取れません。そこで、岩船駅員と瀬波温泉駅員が19:00の駅務終了後該当列車に乗り込み、村上市から回送列車として走行している間に車内清掃を行っています。かえでんでは、駅務スタッフは基本的に各駅へ直接出勤するのではなく、車庫のある聖籠駅もしくは横越駅へ出勤し、始業業務を行った後各駅へ向かいます。岩船駅員と瀬波温泉駅員は終業も同様に聖籠駅へ戻る必要があるため、その移動時間を有効活用しています。なお土休日は岩船駅員の駅務時間が17:00までのため、この列車に乗り込むのは瀬波温泉駅員のみとなります。
種別設定
下越「急行」電鉄という社名を冠していながら、現在運行されている種別は普通・快速・特急の3種類のみ。急行列車は運行されていません。これは鉄道網の乏しい新潟県において、全域にわたって優勢なJR(国鉄)に合わせているものと考えられます。JRの場合急行列車と言えば急行料金が必要な優等列車であり、すでに淘汰されているとはいえ沿線住民にとっては「お金のかかるよそ行きの列車」という感覚があるかもしれません。首都圏や近畿圏ならともかく、地方においては各社が様々な種別を設けていると旅客案内上不都合が生じかねないので、今後も急行列車は設けないことにしています。
しかし本来、特急の正式名称は【特別急行】。【急行(Express)】がないのに【特急(Limited Express)】があるのは不自然に見える部分もあるので、かえでんでは特急列車の英語表記を【Express】としています。
ポケット時刻表
各駅の発車時刻を記したポケット時刻表(定期券サイズ)が利用者に無料で配布されています。JR系列や東日本の私鉄で主流の横書きタイプで、停車駅案内や接続情報などを省き、必要最低限の情報のみ記載されています。地方私鉄においては珍しく、基本的には駅ごとに作成され、各線末端部の駅など本数の少ない駅については複数駅が1枚にまとめられた形式をとっています。いたずら防止のため無人駅には設置されず、有人駅窓口にて全駅分の在庫を確保し、お客様からの申し出に応じて配布されています。
かえでんヒストリー ~1987年2月14日ダイヤ改正~
現行の路線との差異
・新潟古町地下線開業前。新潟側ターミナルは2面3線の萬代橋駅
・空港線は未開業。また阿賀野線のもえぎ野駅も未開業。
・聖籠車庫が未整備かつ大形車庫の縮小前
・複線区間 村上線:萬代橋~濁川 / 阿賀野線:東石山~横越
本ダイヤの特徴
村上線は、現行ダイヤ(2021年7月改正)に比べ、大形中央駅・木崎駅発着の区間列車が多数運行されていました。当時は木崎ニュータウンの開発真っただ中。複線区間は濁川駅以西となっていますが、翌年の木崎駅までの複線化を目前に、輸送力増強に苦労を重ねていた様子が見て取れます。現在はニュータウンの広がる聖籠駅近辺はまだまだ農村地帯さながらといった様相で、聖籠車庫が未整備であることも合わせ、現在に見える拠点性はまだ影も形もありません。また、村上市駅~岩船駅・金屋駅間にも区間列車が多数運行されており、“末端部”である村上側の需要も現在より太いものであったことがうかがえます。なお当時は、新潟古町駅までの地下線の開業前(1994年完成)のため、新潟側ターミナルは萬代橋駅でした。
当時の特急は、現行のような「A特急」「B特急」といった種別分けはなされておらず、萬代橋駅・沼垂駅・紫雲寺駅・岩船駅・村上市駅を基本停車駅として、聖籠駅・築地駅・金屋駅・瀬波温泉駅にランダムで追加停車をしていました。戦後にスプロール化の進んだ地域にある大形中央駅や当時売り出し中のニュータウンがある木崎駅には1本も停車せず、現行のB特急に見えるような「通勤特急」感は当時はありませんでした。もっぱら、拠点同士を主に結ぶ旧来の意味での「特急」らしい運行体系をしていたと言えます。
阿賀野線は、2年前の1985年に並行する国鉄信越線が2本/hのシティ電車ダイヤを導入し、本格的な競争に立たされ始めました。この当時は沼垂駅~東石山駅間が単線のため、ダイヤ作成のネックとなっていましたが、不等間隔ながら横越駅以北は毎時3本程度を確保していました。併せて現在よりも速達性を強く意識しており、日中にも快速列車が複数運行されていました。特筆すべきは下りR529列車と上りR532列車で、ともに午前中に運行されR529列車は水原・安田への観光輸送を、R532列車は新潟市内中心部へのダイレクトアクセスを目論み、途中沼垂駅・水原駅・水原中央駅・安田駅に停車駅を絞って運行されました(R529列車は普通列車の間隔調整のため南安田駅・笹堀駅にも停車)。
当時は車両・路線ともに規格が低く、最高速度が全線で85㎞/hとなっていました(現行は村上線一部区間で100km/h)。新性能車が続々と投入され始めたころで、保有車両数のおよそ半分はまだ旧型の吊掛駆動車となっていました。現行では新潟古町駅~村上市駅間を普通列車が約85分で走破しますが、当時は旧型車の一部で約100分を要しており、本格的な設備更新が急務となっていたと言えるでしょう。特急列車は当時から専用車両を準備し、特急料金100円を徴収していました。地方私鉄には多く見られた日車ロマンスカータイプとなっていました。
ひだじ先生の架鉄イラスト
ひだじの架鉄垢(@hidazi_katetsu)様がかえでんのイラストを描いてくださいました。
(執筆:作者N)